人間は、呼吸をしなければ生きていけません。生きていくために必要なエネルギーは、食事などによって摂取した栄養素と酸素によって作られるからです。この際、同時に二酸化炭素が産生されます。エネルギーを作る重要な役割を果たしている酸素は、息を吸うときに体の中に取り込まれ、一方、二酸化炭素は、息を吐くときに体外へと排出されます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの病気や、呼吸をつかさどる神経・筋肉などの病気により肺の機能が低下した状態になると、正常な呼吸を行うことができなくなります。すると酸素不足に陥るだけでなく、二酸化炭素も十分に吐き切れなくなり、体内に溜まってしまいます。こうなると、在宅酸素療法で酸素を補うだけでは不十分で、過剰な二酸化炭素を排出する必要性が生じてきます。
そこで、在宅人工呼吸療法(HMV:Home Mechanical Ventilation)により、機器を使って呼吸の補助を行い、過剰に溜まった二酸化炭素を排出し、酸素の取り込みを促します。
在宅人工呼吸療法には、マスクを使用して実施する方法(NPPV:Noninvasive Positive Pressure Ventilation)と、気管切開をして実施する方法(TPPV:Tracheostomy Positive Pressure Ventilation)があります。
以前は気管の切開による気管切開下人工呼吸が主流でしたが、患者さんに加わる負担が大きいため、最近では気管切開をせず、マスクを使用するNPPVが主流となっています。特に呼吸器系疾患では、ほぼ全例が NPPVにより在宅人工呼吸管理をしていると言ってよいでしょう。
NPPVでは次のようにして呼吸を補助します。
- 息を吸うとき:機器から空気を送り込んで肺を膨らませ、酸素の取り込みを補助します。
- 息を吐くとき:圧力を低くすることによって気道を開き、肺が縮む動きを助けて二酸化炭素を排出します。