酸素は肺や心臓をはじめ、あらゆる臓器のはたらきに関与しています。
肺・心臓・肝臓・腎臓など、体の中の臓器がはたらくためには、エネルギーが必要です。私たちは、食べ物を酸素で燃やすことによってエネルギーを作り出し、生命活動を維持しています。酸素はエネルギーの産生、生命の維持に不可欠なのです。
酸素が不足すると、下記のような症状が現れてきます。
- 胃腸のはたらきが悪くなる
- 疲れやすい
- 動悸・息切れがする
- イライラする
- 体がむくむ
- 眠れない
酸素は、呼吸によって体内に取り込みます。呼吸機能がうまくはたらかないと、体の中に酸素を十分に取り込めなくなります。
このような状態を呼吸不全と呼び、病状が1ヶ月以上に及ぶ場合を慢性呼吸不全と言います。慢性呼吸不全を引き起こす主な呼吸器の病気には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺結核後遺症、肺線維症(間質性肺炎)、肺がんなどがあります。
慢性呼吸不全が進行すると、呼吸困難によって日常生活に大きな支障をきたすようになります。また血液中の酸素が不足したままの状態が長引くと、肺以外の臓器に負荷がかかり、高血圧や心不全、脳卒中、狭心症、急性心筋梗塞などの合併症を引き起こす危険が出てきます。
そこで、慢性呼吸不全の原因となった病気の治療と同時に、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)によって酸素の足りない状態を改善します。在宅酸素療法を行っている患者さんの内訳としては、COPDが45%、肺線維症・間質性肺炎・じん肺等が18%、肺結核後遺症が12%程度と、呼吸器の病気がほとんどを占めています。
在宅酸素療法は、病状は安定しているものの血液中の酸素が不足している方が、ご自宅などのクリニック以外の場所で、不足している酸素を吸入する治療法です。
自宅に酸素供給機を設置し、必要時あるいは24時間にわたり、酸素吸入をします。在宅酸素療法は、息切れなどの自覚症状を改善し、慢性呼吸不全患者の生命予後の改善などに役立ちます。また家庭での酸素投与によって在宅療養や社会復帰を可能にし、生活の質(QOL)を高めます。酸素吸入により心臓をはじめとする諸臓器を低酸素状態から守り、寿命を延ばす効果も実証されています。
現在、全国で10万人以上の方が、ご自宅で酸素吸入をしています。
下記の条件を満たした場合、在宅酸素療法には健康保険が適用されます。受診時に、窓口で自己負担分をお支払いください。
対象疾患
- 1. 高度慢性呼吸不全例
- 2. 肺高血圧症
- 3. 慢性心不全の対象患者
- 4. チアノーゼ型先天性心疾患